家を出て半年が過ぎたころ、ようやく一人の生活にも慣れてきた時に起きた出来事です。
いつものように静かな午後を過ごしていたその日、突然玄関のチャイムが鳴りました。
モニターに映ったのは、絶対に来るはずのない人物──加害者でした。
この記事では、筆者が興信所に見つかってしまった日のエピソードと、そのエピソードを踏まえた反省点も合わせてご紹介します。
1.凍りついたチャイムの音
突然玄関のチャイムが鳴り、モニターに映ったのは、居場所を知るはずのない加害者でした。
「まさか、ここまで来るなんて…」
心臓が強く脈を打ち、思考よりも先に体が震えました。とっさに110番通報し、警察が到着するまでの間、加害者は玄関先で何かを言い続けていましたが、恐怖で内容はほとんど聞き取れませんでした。
警察の介入でその場は収まりましたが、心の動揺は収まりません。
その日のうちに支援団体へ連絡を入れ、急きょシェルターへ身を寄せることになりました。
2.探偵の影と失われた日常
シェルターに落ち着いてから判明したのは、加害者が探偵を雇い、私の居場所を突き止めていたことでした。
知られていたのは、住所だけではありませんでした。
家を出てから築いた人間関係──親しくなった友人、職場の同僚、そして新しく出会った恋人。
彼らの名前や住まいまで、加害者の手に渡っていたのです。
「〇〇って人が、あなたのこと聞いてきたんだけど…何かあった?」
驚きと不安の入り混じった声が、友人や同僚から届きました。
その声に支えられながらも、心のどこかでは「私が関わったせいで」と自責の念が募りました。
3.洗濯物が暴いた居場所
なぜ居場所が知られたのか──その理由を知ったとき、私は声を失いました。
きっかけは、洗濯物でした。
探偵が私の住むマンションの周辺を張り込みしていたとき、ベランダに干された一枚のパーカーに目を留めたそうです。
以前から私が愛用していたその服を見て、「本人に間違いない」と判断し、加害者へ連絡を入れたといいます。
日常の何気ない行動が、居場所を特定される決定打になる──そんな恐ろしさを身をもって知った出来事でした。

このエピソードは、当日突撃訪問してきた加害者が、警察に話したことで知ったよ。
洗濯物の他にも、たとえば「表札は出さない」「置き配は避けて宅配ボックスを利用する」「買い物ルートを複数持つ」など、日頃から気を付けておくと◎
4.前兆は確かにあった
今振り返れば、不審な前触れは確かに存在していました。
事件の一ヶ月ほど前、何度か「業者」を名乗る人物たちがインターホンを押してきたのです。
「ガスの点検です」「水道の調査をしています」と言いながら、名刺も会社名も曖昧で、どこか様子がおかしかった。
どの業者さんが本物か偽物か、真実はわかりませんし、考えると全てを疑わなくてはいけないので、考えない方が良いのだと思います。
しかし中には、「結構です」と断った後もドアの前にこっそり居続けた業者さんもいました。
今思うと、その時点で警察に相談しても良かったのかもしれません。
5.通報という選択が、私を守った
加害者が目の前に現れた瞬間、迷わず通報したあの判断が、自分の身を守る結果となりました。
もし一瞬でも迷っていたら、どうなっていたか分かりません。
警察の方々の迅速な対応には、今も感謝しています。
あの一件以降、私はさらに慎重になり、新たな場所での暮らしを一歩ずつ始めました。
怖さが消えることはありませんが、それでも前へ進もうとしています。
6.離れられなかった場所──後悔と向き合う
あのとき、県外まで逃げる決断ができていたら──今でもそう思うことがあります。
けれど、私は地元を捨てきれなかった。慣れ親しんだ景色、人のつながり、記憶のある場所…それらを完全に手放す勇気が、私にはありませんでした。
そして、出るタイミングも遅すぎました。
一度、家を出るチャンスはあり、その時は友人が「出た方が良い、一緒に家を出よう」と言ってくれ、お金も立て替えてくれようとしました。
しかし、私は加害者である親から「絶対に、何があっても人にお金を借りてはいけない」と常々言われ続けていました。
結局私は「お金は借りてはいけない」「私はお金がない」と、自分に言い訳して動けませんでした。
あのときの私は、自分の生活よりも、「今、出るのは無理」という理由を探すことに必死でした。
けれど現実は、そこから状況が良くなることはなく、むしろ悪化していきました。
実際に出なければならなくなったときには、心も体も、そしてお金も、もっと削られていて──「あのとき出ていれば」と何度も後悔しました。
思い切って居場所を変えられなかったことや出るチャンスを逃したことは、たくさん後悔して、そして今では反省しています。



もちろん、人にお金を借りて良いということではないと思う。大切なのは、もし緊急時に人にお金を借りることになったなら、何に変えても返済を約束通り滞らずにすることだと思うよ。
7.自立とは、簡単なことではないけれど
家を出て、興信所に見つかった時のことは今でも恐怖心と共に覚えていますが、家を出て、自立を選んだことを後悔してはいません。
あのまま同じ場所に留まっていたら、私はもっと深く傷つき、心を病んで「自由」を失っていたかもしれないからです。
一生懸命自立に向けて頑張って、時には人に助けを求め、時には支援してくれる機関と繋がりながらでも前進すれば、少しずつでも明るい方向へ進むことができます。
この文章を読んでいる方の中にも、私と同じように家を出ることを考えている方、あるいはすでに苦しい状況に置かれている方がいるかと思います。
私の経験が、「行動」のきっかけとなることを、心から願っています。
大丈夫。あなたは一人じゃありません。
だから、たくさん準備をして、確実に安心して外への一歩を踏み出してくださいね。